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能管ののどの長さによる影響


 目的と方法

この実験は、のどの長さによって笛の音程がどのように変化するかを調べる目的で行いました。実際の音程は、指孔の位置を変えれば済むわけで、開口端補正のパターンを実際の能管に近づけるためには、どのくらいの長さののどが必要かを調べています。

使った塩ビ管横笛は、内径13mmのものです。試行錯誤の途中経過のものですので、唄口から指孔までの距離の数値そのものは、あまり気にしないでください。唄口からの距離とは、唄口の管尻側エッジから指孔の唄口側エッジまでの距離です。唄口サイズは13x10mmで、指孔サイズはすべて直径8mmです。

7孔 6孔 5孔 4孔 3孔 2孔 1孔 筒尻
唄口からの距離 (mm) 107 134 155 175 194 212 230 279



のど自体はのどの作成のページを見ていただくとわかると思います。
全長30mm・40mm・50mm・60mm・70mm・90mmと5種類ののどを使って、開口端補正を調べてみました。上の写真では、40mmと70mmがどこかに行ってしまって無いです。笛はすべて同じ塩ビ管横笛を使い、のどの位置は、唄口の管尻側エッジと第7孔の唄口側エッジのちょうど中間点です。



プラスチック能管の研究に出した能管の開口端補正のグラフと、まだのどの入っていない状態での塩ビ管横笛の開口端補正のグラフを並べてみました。のどが入っていない状態のグラフは、塩ビ管横笛の研究で調べたものとほぼ同じで、通常の塩ビ管横笛のパターンです。ここで、のどを入れることによって、右側のグラフをいかに能管型のグラフに近づけるかがポイントとなります。

目標としては、

  1. 開口端補正のグラフが、このように、X字型をしていること。
  2. 呂音甲音間の開口端補正の差が、第6第7孔付近でなるべく大きいこと。
  3. 甲音における第1−第7孔間の開口端補正の差が、なるべく大きくなること。

といったところでしょうが、お祭りの能管の曲では、呂音の下の方は使わないので、それはある程度無視しても問題ないでしょう。


 実験の結果 (開口端補正)

のどの長さを30mmから90mmまで変化させた場合のグラフを、一覧にしました。



このように、6ポイントでデータを採りました。はじめの予想では、のどの長さが短いものから少しずつのどの効果が現れ始め、長くなるにつれてのどの効果が強くなるのかと思っていました。しかし、30mmですでにかなりののどの効果があり、40mm〜60mmでは、多少の差はあってもあまり違わない感じです。いずれにしても、X字型のグラフになっています。

70mmになると、第6・7孔の開口端補正の差がかえって小さくなり、ある意味では、のどの効果が減ってきています。また、音もかすれた感じになってきます。90mmでは、ほとんど呂音の音が出なく、全然ダメです。


呂音と甲音の開口端補正の差のグラフも作ってみましたが、やはり、のどの長さが50mmと60mmのあたりが一番良さそうです。

ただし、これはあくまで内径13mm塩ビ管で能管を作る場合の話です。本物の能管は内径15mmぐらいで、ぜんぜん違いますので注意してください。

第6・7孔では開口端補正の差が大きく、第1・2孔の開口端補正の差が小さい(負の絶対値が大きい)という条件を良く満たしています。

30mmでは少し苦しいかもしれませんが、40mmならば、オリジナルの音程次第では、十分に使えそうに思います。

上にも書きましたが、のどがあるか無いかでは大きな差がありますが、のどの長さによる変化は、思ったほどではありませんでした。


 実験の結果 (音程)


開口端補正は指孔の位置を逆算するときには便利なのですが、感覚的にわかり難いので、音程値で見てみましょう。音程値は、440Hz(Aの音)を0として、半音上がるとともに1ずつ増える数字です。
数式は、 音程値 = 12 * LOG ( 周波数 / 440 , 2 ) です。

上のグラフは縮尺の関係で見にくいと思いますが、甲音ではのどがあるとのど無しに比べて、唄口寄りの孔では音程が下がり、管尻側の孔では音程が上がる、呂音ではのどがあるとのど無しに比べて、唄口寄りの孔では音程が上がり、管尻側の孔では音程が変わらない、ということがわかると思います。



音程値のグラフでは細かいところが見にくいので、のど無しの場合の音程値との残差を調べることにしました。
上のグラフは、のど無しに比べてどれだけ音程が変化したかを表しており、のどの効果を見るのには、感覚的に一番理解しやすいと思います。

甲音の方を見ると、のど無しに比べて、6・7孔の音程が下がり、1・2孔の音程が上がっているのは、50mmが一番良いですね。60mmは、50mmに比べて6・7孔の音程が多少高く、40mmは、50mmに比べ・ト1・2孔の音程が多少低いです。70mmは、明らかにのどのパフォーマンスが落ちています。

1・2孔の音程で見て行くと、30mmではまだ十分音程が上がっておらず、40〜60mmとのどが長くなるにつれて、音程の上がり方が強くなってきます。しかし、70mmになると、かえってまた音程が下がってしまいます。

6・7孔の音程で見て行くと、30〜50mmではしっかりと下がっており、下がる程度も同じくらいだが、60・70mmとのどが長くなるにつれて、音程の下がり方が少なくなり、音がかえって上がってくる結果になっています。

呂音の方を見ると、1・2孔では、30〜70mmまでほとんどのど無しと音程は変わらず、ここはのどがあっても無くても同じということになります。6・7孔では、30mmから70mmと増えるにしたがって、単純に音程は上がって行き、全体のスロープも急になってきます。


 考察

以上の結果から、内径13mm塩ビ管で能管を作る場合、のどの長さは50mm〜60mmぐらいがちょうど良さそうだという結論になりました。50mmと60mmと比べてみると、データ上はあまり差がありませんので、塩ビ管に挿入したり固定したりするのがより簡単と思われる50mmの方を基本的に使うことにしました。次の、「のど」の位置による影響の研究を見ていただくとわかりますが、のどの長さより位置の方が音程に対してはるかに影響が大きいです。設計するときには、のどの長さよりも位置の方が重要に思われます。


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