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塩ビ水道管による宮流神楽笛の製作 |
◆ 本物の宮流神楽笛のデータ まず、実物を計測してみました。 「唄口からの距離」というのは、唄口の中央から指孔の唄口に一番近い部分の端までの距離のことです。 上の写真は1孔がうまく写っていませんが、ちゃんと穴があります。
唄口の大きさ 11x13mm 筒尻の内径 10.5mm チューナーで測定した周波数は以下の通りです。室温は22℃でした。 古典調とも違う音列ですが、12本調子に相当するぐらいの、かなり音の高い笛です。
レから始まる平調子に近いと考え、各音程を平均律にあてはめてみると、次のようになります。「1」の音は神楽ではほとんで出てこないのでカットしました。どうみても、西洋音楽的な感覚では理解しがたいですね。 わかりやすいように少し上へずらしてみましたが、あまり変わらないようです。本来は、孔の位置による音程だけでなく、メリカリで変化させているだろうから、何とも言えません。 この特殊なスケールについては、別のページに書くつもりで、現在、研究中です。 ◆ 試作品 唄口から指孔までの距離などを、だいたい実物と同じサイズにして、塩ビ水道管で試作品を作ってみました。
唄口の大きさ 9x11mm 筒尻の内径 13mm 結果的に得られた周波数は、以下の通りでした。 実物の内径は管尻で10.5mmであるのに対し、塩ビ水道管は内径13mmですから、やはり全体的にピッチが下がっています。これは、筒音の実験02でも調べたように、筒の直径が太くなると開口端補正が大きくなり、音が下がるからです。
◆ グラフ
◆ 近似式 試作品の2孔〜7孔の周波数の数値をもとに近似式を作成し、ピッチのずれを修正することにしました。 1孔は穴のサイズが違うので、近似式作成のデータには入れてありません。 神楽ではほとんど甲音しか使いませんので、甲音だけで近似式を作っています。 なお、実はもう1本試作品を作成したので、そのデータも入れて近似式を作りました。 近似式作成ソフトはFit Equation Analizer を使い、最小2乗法による近似式を作ってみました。 甲音の周波数 = 353480.7/(距離+49) + 17.4 式を変形すれば、以下のようになります。 距離 = 353480.7/(甲音の周波数-17.4) - 49 ◆ 完成品 近似式から得られたデータをもとにして、最終的にこのようなデータとなりました。 この距離をもとにして塩ビ水道管笛を作ると、甲音に関しては、宮流神楽笛とほぼピッチが同じ笛になります。 ただ、以下の開口端補正の所に書いてあるように、5〜7孔の呂音の音程はやや高めとなり、大甲もやや高めになってしまうようなので、まだ調整が必要かもしれません。
計測基準点が、唄口のみ中央で指孔は端ですので、注意してください。これは、横笛自体を、音の発生源が唄口の中央で、指孔の端を開管の一方の端とする共鳴管と考えているからです。 普通に写真を撮ると孔がうまく写らないので、中に紙を入れて写真を撮りました。 ◆ 開口端補正 実際の宮流神楽・Jと完成した水道管横笛で、開口端補正をそれぞれ計算してみました。 宮流神楽笛では、呂音/甲音の開口端補正の差は3〜5mmと比較的一定であり、グラフはほぼ平行になっています。これは、1〜7孔の間でオクターブ比があまり変化していないことを意味します。 それに対して、水道管横笛では、2〜3孔付近は呂音/甲音の開口端補正の差は2〜3mmぐらいに対し、6〜7孔付近は5〜6mmと大きくなっています。これは、2〜3孔よりも6〜7孔の方がオクターブ比が低くなってしまうことを意味しています。 原因は、宮流神楽笛の管の太さが先細り状態であるのに対し、水道管横笛の内径は全く均一であることではないかと思います。 この点は今後の検討課題ですが、孔のサイズを変化させることによって対応できるかもしれません。 ◆ 最終データ 理論的なことをいろいろ書きましたが、試行錯誤の結果、現在は以下の長さで作っています。ただし、上の記述と違って、唄口の管尻側エッジから指孔の管頭側エッジまでの距離ですので、注意してください。 また、内径13mmの塩ビ管に9mmの指孔で笛を作ると、小学生は孔が大きすぎて押さえきれませんし、息も弱いので高音が出ません。 内径11mmのアクリル管で作ると、小学生でも楽に音が出せます。そのデータも合わせてどうぞ。 内径13mm塩ビ管による宮流神楽笛(唄口10x12mm、指孔径9mm)
内径11mmアクリル管による宮流神楽笛(唄口9x11mm、指孔径7mm)
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