トップページへ |
能管の各部分の計測 |
上が宮流神楽笛で、中が能管(プラスチック製)、下が唄用篠笛八本調子(朗童管)です。私の地域では能管のことを大笛とも呼び、大きな笛というイメージがあるのですが、これは宮流神楽笛(十二本調子ぐらい)が取り立てて小さいためです。八本調子の篠笛と比べてみると、唄口から指孔の距離や指孔間隔などは能管の方がずっと短く、能管は指孔の位置だけから言えば、十本調子ぐらいに相当します。 ◆ 測定した能管 私の持っている能管 ・ プラスチック製の能管 ・ 「蜻蛉」銘の能管 先輩(成田政明師匠)から借りた能管 ・ 菊田雅楽器店製のちゃんとした能管(菊田(大)) ・ 菊田雅楽器店製の練習用能管(菊田(小)) 以上4つの能管でいろいろ計測したものをメインとし、ネット上の参考データなどを追加しました。 ◆ 能管の指孔の位置 以下の表の数値は、唄口の指孔側端から各指孔の唄口側端までの距離(mm)です。上の写真は「蜻蛉」銘の能管ですが、例えば「唄口から第七孔までの距離」は、上の写真の緑の線の間の長さを指しています。 蜻蛉・プラ能管・菊田(大)・HPの指孔の位置を見ると、ほとんど誤差範囲程度の差しかありません。それほど個体数があるわけではないのではっきりしませんが、おそらく能管の指孔の位置は、一般的なものは全国共通で、同じなのかもしれません。 ただ、菊田(小)だけは、全体に数値が大きいです。これは、菊田(小)は練習用の値段の安い能管で、かなり細身の竹で出来ています。そのため、同じ孔の位置ではピッチが上がってしまうため、・Eの位置を少し管尻側にずらしたものと考えられます。ここには出してありませんが、塩ビ管で作った能管も内径13mmしかないため、指孔の位置は管尻側にずらしてあります。 なお、HPは、http://www.mie-c.ed.jp/esugur/5nen-jidou-tukurikata1.htmのデータから逆算したものです。
以下の表は、上の表から「指孔の間隔」を計算してみたものです。例えば、蜻蛉の第6孔の24という数字は、第7孔から第6孔までの距離(mm)、第5孔の22.5という数字は、第6孔から第5孔までの距離を表しています。 これを見ると、プラ能管の第7−6孔間がちょっと長く、HPの第1孔−管尻がちょっと短いですが、他は、大きな差は無いようです。
◆ 内径のデータ 計測はレントゲン写真(線源距離は1m)をスキャナーに取り込んでから測っているので、内径、つまり短軸方向には0.1mmの精度があると思います。今まであまり無かったデータではないでしょうか。
このデータをグラフ化したものが、以下の図です。 グラフで見ると、「蜻蛉」銘の能管は、指孔付近の内径とのどの内径の差が少なく、のどの効きがやや少なめです。そのことは、音程測定でもはっきりと出ていますが、これは、師匠の能管に合わせて、わざわざのどの効きが少ないものを買ったからで、「蜻蛉」能管ののどの効きが一般的に少ないというわけではありません。 音程測定では菊田(大)ののどの効きが一番強かったですが、やはりこのグラフでも、のどと指孔付近の内径差は、菊田(大)が一番大きいようです。ただ、菊田(大)ののどは、テーパー部分が大きく、本当に狭いところは少しだけです。そのことは、このページ最後レントゲン写真ののどを見ると、もっとよくわかります。 プラスチック能管は、どういう能管をベースにしたのかわかりませんが、唄口部分と指孔部分の内径がかなり違いますし、指孔部分もテーパー形状になっているので、このグラフだけでは、のどの効き状態がつかみかねます。 菊田(小)は、指孔部分の内径が小さいため、他とはかなり状況が違うようです。 結局、常識的な能管は、本体部分の内径が15mmぐらいで、のどの部分の内径が12mmぐらいが普通だろうと仮定することにしました。別のページで、内径15mmのアクリル管に厚さ1.5mmののど(つまりのどの内径12mm)を入れて実験を行っていますが、これらの数値に基づいてセッティングしたものです。 ◆ のどの長さと位置 のどの位置に関する実験のページを見るとわかりますが、のどの長さよりものどの位置の方が、はるかに音程に対して影響が大きいです。常識的には、唄口の指孔側端と第7孔の唄口側端の中央にあるものでしょうが、実際の能管で検証してみました。 のどの長さは、プラ能管だけ74mmで他は85mmぐらいですが、プラ能管はテーパー部分が短いので単純には比較できないのかもしれません。ただ、のどの長さの実験のページに書いたように、のどの長さは、もちろん音程の変化に影響はありますが、のどの内径や位置に比べると、音程に寄与する率は少ないので、おおざっぱに80mm前後と考えれば良いのかもしれません。 のどの位置は、蜻蛉と菊田(大)で、1mmだけ唄口に寄っていますが、意図的なものでは無さそうです。
◆ 唄口と指孔の大きさ 唄口サイズは、篠笛や神楽笛よりもかなり大きく、長径で15〜17mmもありますが、測ってみると、笛によって結構ばらつきがあるようです。長径/短径の比は、蜻蛉が1.29、プラ能管が1.32、菊田(大)が1.27でした。 指孔サイズは、蜻蛉・菊田(大)の長径で見ると、第7孔が10mm、第1孔が8.5mmぐらいで、第7から第1孔に向かうにつれて少しずつ小さくなって行きます。何故かプラ能管は全部同じくらいのサイズですが、ネット上のいろいろな写真を見ても、第7から第1孔に向かうにつれて少しずつ小さくなるのが普通のようです。
◆ 各能管のレントゲン写真と特徴 蜻蛉の特徴 のどの内径が13mmちょっとと大きく、音程的にもやはりのどの効きは少ない。 レントゲンでは下塗りの陰影が強く、砥の粉のたくさん入った下塗りを、かなりの回数行っていると思われる。ネット上に出ている能管のレントゲン写真を見ても、このように下塗りの陰影が強いのが普通で、菊田のようにレントゲン透過性が高い方が、普通では無いと思われる。 管頭と管尻は、いずれも別の竹で接いであり、管尻は細い竹になっている。 外装の巻きは、ナイロンフィラメント(おそらく黒のテグス)と絹糸を交互にまいてあり、指孔周辺は拭き漆で塗装してある。 プラスチック能管の特徴 第6孔から管尻にかけて、他の能管に比べ、かなり直線的に強くテーパー構造になっている。 第6〜7孔付近の内径が15mmちょっとあるのに、唄口付近の内径は14mmしかないのは不思議だが、見本にした能管がそうなっていたのかもしれない。 菊田(大)の特徴 のどの内部構造が、両側とも極端にテーパー状になっており、他の能管に比べ特徴的である。 管尻の内部にのど様の構造物を入れることにより、管尻の内径を極端に細くしている。 下塗りに含まれている砥の粉の量が、レントゲンでは非常に少なく、神楽笛などと同じような下塗りであるのかもしれない。 菊田(小) 全体的に内径が細い(第6〜7孔で13mm)ため、指孔の位置を、上記3本よりも管尻方向に2〜3mmずらしている。ただ、唄口部分は内径14mmと指孔部分より太くなっており、ピッチ調整で削って太くしているのかもしれない。 下塗りに含まれている砥の粉の量は」やはり少なく、神楽笛と同じような下塗りかもしれない。 蜻蛉 プラスチック能管 菊田(大) 菊田(小) 自作竹製能管5号 (比較のために載せた写真で、上のレントゲン写真とは直接関係ありません) |
トップページに戻る | 上のページへ | メールを送る | ||