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各指孔の音程 (管頭反射板の位置による影響)


 実験のデザイン

管頭に入れている栓の位置は、唄口の管頭側端の1mm手前までにしています。これは、私が作っている水道管横笛に限らず、世の中一般的な篠笛は、たいてい唄口から1〜2mmの位置になっています。しかし、フルートは唄口の端から管頭の反射板まで17mmもありますし、水平リシ笛のように竹の節を利用するのみで栓を入れない横笛もあります。
 fig.1

そこで、管頭の栓の位置をいろいろ変化させて、音程や開口端補正がどのように変わるかを調べてみました。方法としては、右の写真のように、管頭の栓を少しずつ引き出して、それぞれ、指孔の音程を測定しています。

唄口の端から管頭の栓、つまり反射板までの距離は、1mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mmの6種類です。

笛は、指孔の位置が125mmから300mmの8孔の笛で、1孔から管尻までの距離は34mmです。


 音程

まず、得られた周波数のデータから音程を計算し、グラフにしてみました。
Y軸の数値は、440HzのAから半音の何倍離れているかを表すもので、12と24がA、3と15と27がCにあたります。

fig.2
fig.3

fig.2で見るように、呂音では、唄口から反射板までの距離が変化しても音程はほとんど変わらないと言って良いでしょう。厳密に言えば、唄口から反射板までの距離が長くなるにつれ、6〜8孔の音程がかすかに下がるようですが、ほとんど誤差範囲のレベルと言ってよいと思います。つまり、

それに対して、fig.3を見るとわかるように、甲音では、唄口から反射板までの距離が長くなるにつれて、唄口に近い指孔ではどんどん音程が下がって行きます。これは、唄口に近い指孔ほど顕著で、唄口から反射板までの距離が1mmから25mmまで変化すると、第8孔(唄口から125mm)の甲音の音程は26.48(B +48%)から24.65(A# -35%)まで1音弱下がってしまいます。第8孔の呂音の音程が14.94(C -6%)であることを考えると、25mmの場合は楽器としてはかなり困った状態であると言えます。

これらの結果により、唄口の端から栓の反射面までの距離は、短ければ短いほど良いということがわかり、世の中一般の篠笛がほとんど1〜2mmになっている理由が納得できます。

ただ、1mmになっていても、唄口から125mmの指孔では呂音の音程が14.94(C -6%)、甲音の音程は26.48(B +48%)であり、半音の46%にあたる音程差があることは確かです。しかしこの程度ならメリカリで十分に補正できる範囲ですし、一般的な篠笛は、たいていこのくらいの音程差があります。


 開口端補正

唄口の端から栓の反射面までの距離は1mmが最も良いことがわかってしまったので、開口端補正を見て調整する局面は無さそうですが、一応、開口端補正のグラフを作ってみました。左側のfig.4が呂音のもの、右側のfig.5が甲音のものです。

fig.4
fig.5

fig.4で見るように、呂音では、唄口から反射板までの距離が変化しても、開口端補正の変化はせいぜい1mm程度(唄口から125mmの指孔)ですし、唄口から200mm以上離れた指孔では、開口端補正もまったく同じです。

それに対して、fig.3を見るとわかるように、甲音では、唄口から反射板までの距離が長くなるにつれて、開口端補正はどんどん大きくなります。これは、唄口に近い指孔ほど顕著で、唄口から反射板までの距離を1mmから25mmまで変化させた場合、第8孔(唄口から125mm)の甲音の開口端補正は45.22から64.17まで、極端に大きくなってしまいます。


 オクターブ比
 fig.6

オクターブ比は、唄口指孔間距離を、呂音の開口端補正をKR、甲音の開口端補正をKK とすると、

  2 x ( KR ) / ( KK

で表されますので、開口端補正のグラフで見るように、呂音に比べ甲音の開口端補正がどんどん大きくなってゆけば、オクターブ比は著しく悪くなってゆきます。

フルートでは管頭がテーパー状になっていますし、水平リシ笛でも竹の内径は節に近づくにつれて狭くなっています。そのような管頭部のテーパー状の形態が無い限り、管頭の栓の位置は、いくら動かしてもオクターブ比は改善できないということです。

残念ながら、塩ビ水道管のような均一の内径の横笛では、栓の位置は唄口に一番近いところがベストポジションということなのですから。

このテーパー状形態の影響については、管頭が内径13mmで指孔付近が内径16mmの塩ビ水道管横笛の研究のところで詳しく書きます。



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