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各指孔の音程 (指孔の直径による変化)


 実験のデザイン

横笛の調律をドレミ調(平均律など)にしようとする場合、1音分に相当する指孔間距離は1〜2孔のあたりと6〜7孔あたりではかなり違いますし、ミとファの間の部分も半音ですので、1〜7孔の指孔間はどうやっても等間隔にはなりません。しかし、ある程度は同じような間隔でないと、押さえ難いことも確かで、通常は、指孔の直径を変えることで、この指孔間隔の補正を行っています。この実験では指孔の直径を変えることによって音程がどのように変化するかを調べました。

fig.1

  ※笛の長さが違うように見えますが、斜めから写真を撮ったせいで、実際にはまったく同じです。
  ※孔径10mmの笛は、写真を撮るのを忘れて違う実験に使ってしまいました。


上の写真のように、指孔の直径が6mm・7mm・8mm・9mm・10mm5種類の水道管横笛を用意しました。唄口から管尻までの距離はまったく同じ334mmにしてあり、指孔間距離もだいたい25mm間隔で同じようなところに孔があけてあります。

唄口のサイズは10x12mmで、管の内径を調べた実験(このときは9x11mm)よりも少し大きくなっていますが、経験上、唄口のサイズは10x12mmが最も良さそうな気がするので、内径11mm管を使わない実験では、10x12mmにしています。

唄口による差が音程の数値に影響しないように、唄口の大きさと形はきちんと同じにしてあります。また、唄口から管尻までの距離は同じですので、筒音が同じであること確かめてから実験を行っています。 周波数の計測は、尺八運指チューナーを使いました。

温はすべて22℃で計測を行っています。ただし、笛を吹いていると、吐く息のせいで管の温度が上がるためか、わずかに周波数が上がってきます。計測は周波数の上昇がおさまってピッチが安定したところで行っていますので、管内の空気温は22℃よりも高いかもしれません。


 実験結果

実際の数値を見てみたい方は、yubi02.xlsを見てください。


 指孔の直径と周波数

下のグラフは、指孔の位置と周波数の関係を、指孔の直径別にグラフにしたもので、fig.2が呂音、fig.3が甲音のグラフです。
ほぼ双曲線になっていますが、もちろん開口端補正があるために厳密には双曲線ではありません。また、呂音も甲音も、指孔径が6mmから10mmまで少しずつ大きくなるにしたがって、唄口から指孔までの距離が同じでも、音程が上がって行くことがわかります。

fig.2
fig.3


 指孔の直径と音程

チューナーで音程を合わせるときには周波数が便利ですが、音の高さとしてはピンときません。そこで、440Hz(=A)からの音程差を示すグラフを作ってみました。

Hヘルツの音程が440ヘルツから半音のP倍だけ離れている場合、
   H = 440 x 2 ^ ( P/12 )
で表されるので、これを変形すると、
   P = 12 x log( H/440, 2 )
となり、この式のもとにY軸を計算しました。

Y軸の数値はA(=440Hz)から半音の何倍離れているかを表しており、以下のような音程に相当します。

A# C# D# F# G#
10 11
12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35

このグラフは非常に便利なので、同じものを横方向に3倍拡大してもう一度表示しています。その1(fig.5fig.9)が唄口から指孔までの距離が120〜185mm、その2(fig.6fig.10)が180〜245mm、その3(fig.7fig.11)が240〜305mmの範囲を表示しています。

fig.4
fig.5

fig.6
fig.7


fig.8
fig.9

fig.10
fig.11

<グラフの使い方>

fig.11の指孔直径と音程(甲音の3)を見てください。
唄口から、275mmのところにある10mm径の指孔の音程は16.0、つまりちょうどC#の高さになります。指孔の位置を同じにして指孔の直径だけ10mmから7mmまで減らすと、つまりグラフの縦軸方向にそって下がって行くと、音程15.6のC#から半音の40%ぐらい下がった音になります。
次は、音程16.0(C#です)に着目してみます。グラフを見ると、この音は唄口からの距離が275mm(正確には274.5mmか)の直径10mmの指孔の音に相当しますが、直径7mmの指孔では268mmと7mmも違うことがわかります。

このことから、直径10mmの指孔サイズで作った笛で、唄口から275mmぐらい離れた位置の指孔を7mmぐらい唄口の方へ移動した場合には、指孔径を7mmにすれば良いことがわかります。
しかし、実際には各指孔の音程は、その指孔のもうひとつ管尻側の孔にも左右されます。経験上、指孔間距離20〜35mm・指孔径6〜10mmの範囲では、もうひとつ管尻側の孔による影響は最大でも開口端補正で1.5mm程度です。指孔径7mmのグラフはもうひとつ管尻側の孔も7mmである場合の数値ですから、もうひとつ管尻側の孔が直径10mmであればもう少し音程が上がるはずで、位置の移動は6mmぐらい(唄口から269mm)と考えた方が良いでしょう。
また、指孔径を7mmにして6mm唄口に近づけた場合、もうひとつ唄口側の指孔の音程も影響を受けるので、考慮に入れる必要があります。もうひとつ唄口側の指孔から見ると、ひとつ管尻側の指孔が近づいてくることによって多少音程が上がります。しかし、ひとつ管尻側の指孔径が小さくなる影響からは少し音程が下がるはずです。

このグラフを見るときに注意する点は、音程から決まってくる指孔の位置の数値は、かなり誤差があるということです。最も大きな影響は唄口のサイズで、唄口の大きさが1mm変わっただけでも開口端補正が全体的に3〜5mmも変化してしまうことがあるからです。しかし、指孔サイズや指孔の位置による相対的な音程との関係は、それなりに精度が高いと考えています。
この実験で使った横笛の唄口〜管尻間距離はすべて344mmで、呂音474Hz、甲音947Hzでした。室温や唄口サイズによる偏移は、この数値から考えていただければ良いかと思います。


 開口端補正

fig.12
fig.13

以下、作業中


 オクターブ比

fig.14
fig.15


 近似式





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